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森林保全事業
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エゾシカの生体捕獲による一時養鹿の可能性

エゾシカの生体捕獲による一時養鹿の可能性

東京農業大学 生物産業学部 増子孝義・相馬幸作・伊藤修一・山守陽一
前田一歩園 高村隆夫・西田力博

はじめに

前田一歩園財団では、野生エゾシカの餌付けにより樹皮食害を防止しているが、餌場に集まる個体数が増加し、その個体数コントロール対策として生体捕獲を2005年2月〜3月にかけて実施した。捕獲個体は素シカとして有効活用するために、東京農業大学と阿寒町シカ牧場に移送し、試験的に肥育を開始した。このような一連の方策は、北海道のエゾシカ対策のモデルケースとして支援され、今後の発展が期待される。取り組みはまだ開始されたばかりであるが、一部を紹介する。

一時養鹿実現のための条件
  1. 生息数のコントロールと有効活用のための生体捕獲
  2. 生体捕獲個体の受け入れ牧場の誘致と開設の支援
  3. 解体施設の誘致と開設の支援
  4. 生産物(シカ肉)の流通、活用法の普及、新商品開発
生体捕獲個体を一時養鹿するための連携システム

生体捕獲から一時養鹿、流通・販売までの流れを図1に示した。2005年2月〜3月に前田一歩園財団の所有する阿寒湖畔北西部と国道南部の2ヵ所で捕獲し(図2、写真1)、前田一歩園財団の捕獲施設(図3)で捕獲したシカは、東京農業大学(写真2、3)と阿寒町のシカ牧場(写真4)に移送した。

飼育・肥育の実規模試験:釧路市阿寒町エゾシカ牧場の事例(写真4)、雄ジカ71頭、雌ジカ140頭の計210頭を移送。飼育・肥育の小規模調査:東京農業大学の事例(写真2、3)雄ジカ8頭を移送。搬入直後、大学で飼育しているシカと当歳子(写真3)。慣れない環境に置かれ、他のシカに興味がある素振りをみせた。相互の飼育・肥育における研究面・技術面情報交換が重要である。

まとめ

一時養鹿の実現には、生息高密度地域に基づく生体捕獲候補地の選定、シカ牧場の誘致、解体施設の設置を進める必要がある。そのためには生体捕獲ジカの安定輸送、飼育管理技術の確立が必要である。