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自然普及事業
Natural Environment Conservation Activities

2009年度(平成21年度)自然環境保全活動助成事業報告


「地域別鳥類文献目録・北海道編」の作成

 早川 貞臣


雅路庵文庫


地域別鳥類文献目録 北海道編

 鳥の仕草や表情、可愛いですね!
 私は、自宅近くの水辺や里山で鳥を楽しむバードウォッチャーです。図鑑やガイドブックなどを揃えていましたが、ある時、ふと「系統的に整理できないものか…?」と思いつきました。定年退職後は全国をまわり「鳥に関する地域資料」の調査を続けています。現在、北海道・東北・関東・北陸・中部・九州地方について主要施設の調査を終えたところです。
 北海道の鳥類文献については「北海道の自然環境に関する主要文献目録Ⅱ 動物編」(昭和54年2月、北海道発行)があります。樺太千島・北海道全般、支庁管内・自然地域別に仕分けがされており、私もこの配列に準じて構成しました。
 また、鳥類研究者である三浦二郎氏に寄せられた文献につきましては「寄贈文献一覧 続・樽前ガロウのほとりで」(平成7月12月、樽前自然教育研究所発行)としてまとめられています。
 文献の探索は調査リストをもとに、先ず北海道立図書館の所蔵文献データベースで検索しました。北方資料閲覧室には4回参りましたが、調査後の点検では北海道編の収録数1,315点の約60%が同館に所蔵されています。都道府県立図書館の中でも極めて充実しており、同館の地域資料の収集・保存・利用の取り組みに敬意を表します。

 自然系施設では(財)日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリネイチャーセンターに延べ8日間参りましたが、三浦二郎氏(平成8年12月26日永眠)の所蔵文献は「雅路庵文庫」として公開されていました。私製本は個人間の互恵ルートに乗るため入手は難しいものです。個人蔵書が散逸することなく保管・公開されていることは貴重であり広く利用されるよう願っております。
 行政関係では北海道環境科学研究センターをはじめ市町村立の図書館・博物館、その他自然系施設などで調査しました。調査を始めて6年、渡道7回、延べ95日、74施設の御協力をいただきました。心からお礼申し上げます。

 財団法人 前田一歩園財団の助成を受けて作成しました「地域別鳥類文献目録 北海道編」は、これまでに調査した11,600点の中から北海道に関する文献1,315点を紹介しています。タンチョウやシマフクロウなどの特定鳥類も含め、内容細目をできるだけ記載し出版年順に並べました。
 鳥類の調査・研究の基礎資料として利用していただき、そして北海道の鳥類史を読みとり楽しんでもらえたら幸せです。



屈斜路湖の湖水に関する学習用DVDの作成

蜂谷  衛

 北海道東部の内陸は寒冷で比較的雪が少ないことから、屈斜路湖は湖氷を研究する上でとても貴重な湖です。ことに氷が盛り上がる御神渡り現象は、わが国最大の規模であり、その不思議で美しい現象に魅せられ、観察を続けて25年が過ぎました。
 この度、助成を受けることができ、より高度な研究が可能となりました。また、これまでの資料をもとに、プレゼンテーション用のパワーポイントやビデオカメラによる動画を作成し、この地域でしか見られない貴重な自然の姿を残し、その成果物は観察会等で広く活用することを目的としています。


御神渡りの調査



雪の結晶のサンプル作り



御神渡り観察会の様子

 事業の経緯ですが、屈斜路湖の結氷と気温の関係を知るために、これまでは隣接する川湯のアメダスデータを参考にしていました。今回はじめて、高精度の小型温度計を湖岸に設置し、1月から3カ月間、1時間毎の気温データを得ることができました。これにより結氷前の湖周辺の気温は川湯よりかなり高いことが分かりました。
 更に2月4日の全面結氷後は、気温の変動と氷板の温度がどう変化するかを調べるため、氷板の深度ごとに温度計を埋め込みました。結果、氷板の表面温度は大きく変動し、深度を増すとゆるやかになることが判明しました。
 ビデオカメラでは氷板が気温の変動で膨張・収縮するときに発する音や御神渡りの氷のせり上がりを撮ることができました。また、気温が-15度以下になると、凍った湖面に水蒸気が昇華してフロストフラワー(霜の花)が現れます。この成長過程を撮るために、一人氷の上にテントを張り、夜中から朝の7時まで、寒さに耐えながらの作業は大変でしたが、貴重な体験をすることができました。

 さて、北国に住む者にとって雪は当たり前で、やっかい者のようですが、その美しさを知る人は、少ないのではないでしょうか。雪の結晶を残すレプリカ法はいくつかありますが、この度入手できた光硬化樹脂液で作成したサンプルはとても完成度が高く、結晶をそのままの形で残すことができます。採取したサンプルは観察会のあるごとに顕微鏡を通して見せましたが、子供から大人までその美しさに驚いていたようです。湖氷の研究と並行して一冬、雪の観察をしましたが、サンプルになるような美しい雪の結晶はなかなか降らないことも分かりました。

 これら屈斜路湖や冬の自然をとおして、氷の不思議な現象や美しさが少しでも多くの人に伝わればと願っています。今後も観察を続け、この度の助成で導入できた研究機材を有効に活用し、広めていきたいと考えています。



普及用冊子「シカとの共生なんでも百科」作成

社団法人 エゾシカ協会

 社団法人エゾシカ協会は、増加著しい野生エゾシカによる社会問題の解決に道筋をつけるべく、「森とエゾシカと人の共生」を合い言葉に設立されました。北海道庁による個体数管理政策(増えすぎたエゾシカの抑制)にともなって毎年6万〜8万頭にのぼるようになった捕獲個体の食肉としての「有効活用」の促進をはじめ、交通事故防止対策、農林業食害抑制対策、森林生態系保全対策、野生動物保護管理の担い手としての「責任ある狩猟者」の育成対策など、多方面にわたる活動を展開しています。
 社団法人の認可を受けて10年目の節目に当たる2009年度は、これまでの成果を生かして「シカ問題」に対する道民の理解を一層深めることに貢献できればと、新しい教材図書(仮題「シカとの共生なんでも百科」の制作を企画しました。さいわい、財団法人前田一歩園財団さまの手厚いご支援をいただけることになり、またエゾシカ研究者のみなさまほか大勢の関係者や多くの関係機関のお力添えを得て、当初想定していた以上に充実した内容を盛り込むことができました。


エゾシカは、森の幸。





本書をテキストに滝川市で開かれたエゾシカ
保護管理をテーマにした勉強会の様子

 タイトルを『エゾシカは、森の幸。』と改めてつけなおした本書は、A4版、フルカラー、64ページ建て。合わせて200部を印刷・製本しました。ほぼ全てのページにカラフルなイラストや図表、エゾシカの愛らしい姿を捉えたカラー写真を添え、とてもビジュアルで親しみやすい仕上がりになっています。
 本文は「第1章 21世紀エゾシカ事情」「第2章 ヒトとエゾシカの長〜い共生史」「第3章 科学で解明! エゾシカのエコロジー」「第4章 ディア・ハンターという生き方」「第5章 エゾシカをいただきます!」「第6章 エゾシカとの共生新時代へ」の全6章32節からなり、生態学・獣医学・進化学・人類学・農学・野生動物保護管理学・食品学・衛生学・狩猟学・社会学・政治学・交通工学・歴史学・民俗学・文学といった見地から、エゾシカについての最新のエッセンスを平易な文体で叙述しています。
 また巻末には付録として、資料集「エゾシカDATABASE」を設けています。北海道庁によるエゾシカの生息状況モニタリングの結果などをグラフで示したほか、エゾシカの行動展示に注力している動物園施設、より専門的な図書資料などについて、詳しく紹介しています。
 取材・執筆と編集には、大泰司紀之・北海道大学名誉教授(野生動物保護管理学)と平田剛士(フリーランス記者)が共同で当たり、印刷・製本は柏楊印刷(札幌市)が行ないました。

 当協会では2010年度以降、本書『エゾシカは、森の幸。』をテキストとして市民向けのエゾシカ講座を開催したり、本書を諸機関におけるエゾシカ対策の際の資料として活用していただくことを計画しています。また、エゾシカに関する研究や政策の進展に合わせ、本書の改訂・増補・増版を重ねていきたいと考えています。



根室管内の植物に係る冊子刊行事業

ねむろ花しのぶの会


見てみよう!ねむろの草花

 昨年度、「大地みらい基金」より助成を受け、小冊子「見てみよう!ねむろの草花」を作成し、管内の小学校等に無料配布したところ、たくさんの購入の希望が寄せられましたが、残部数がなく希望にこたえられませんでした。
 根室管内には、美しい自然が残っているものの、希少種の植物が生育している横にゴミが捨てられていたり、子ども達が根室の花の名前をほとんど知らなかったりするという現状があります。そこで、自然を愛する子どもの育成に向けて、学校周辺の植物の説明と根室管内の自然の素晴らしさと現状、保全の重要性を伝えるとともに、継続して自然観察を行えるよう小冊子を配布したいと考えました。
 即効性はないかもしれませんが、未来を担う子供達に、自分が住む地域の素晴らしさを知ってもらうことで、将来にわたって地域社会の自然保全にかかわっていく人材の育成が期待できます。また、総合的な学習の時間、理科、社会党の教科教育等でも環境教育および地域の人たちとの連携が求められており、地域の学校との連携を深めていくことで教育活動に貢献していくことができると考えました。

 今年度は、前田一歩園財団様より助成を受けて、根室管内の小学校や理科サークルなどで啓蒙活動を行うことができました。また、小冊子も一部改訂、増刷し、希望の小学校、図書館等に配布することができました。
 来年度も、この小冊子を使っての普及啓蒙活動に、力を入れて取り組んで生きたいと思っております。希望される方がありましたら、ご連絡をお待ちしております。



利根別自然休養林観察ガイドブック発行事業

NPO法人 利根別の森ネットワーク

 利根別自然休養林は道央の岩見沢市郊外に位置する休養林で、364haの面積があります。林内には3つの人造池があり、豊かな緑と池が一体となって春は新緑、秋は紅葉など四季を通じて人々の心を和ませてくれる森林です。この森をフィールドとして活動している団体は、岩見沢野鳥の会、利根別自然休養林研究会、岩見沢キノコの会などがあり、当NPO法人は、この森の入口にある「利根別原生林ウォーキングセンター」の管理委託事業を行いながら、日頃これらの団体と協力しながらこの貴重な森をいつまでも市民の憩いの場となるような活動をしています。


2009.03.01冬の森観察会

2009.07.19夏の森観察会

 利根別自然休養林研究会は20年程前に設立した団体で、当NPOの母体といえる団体で、この休養林の植生などを研究するとともに、季節ごとに一般市民を対象にした観察会を催しており、その観察会の配付資料として「観察ガイドブック」を発行してきました。(1.春の植物、2.夏の植物、3.樹木、4.キノコ、5.昆虫、6.シダ)このうち、3.樹木編の在庫が少なくなっており、再版を作る必要が出てきたことから、前田一歩園財団の助成を受けることを希望しました。


ガイドブック3増補版

 当初は「再版」ということを考えていましたが、利根別自然休養林だけでなく、その周辺地域でも利用できるようにと、新たに14種類を加え、計52種類の樹木を紹介できる「増補版」として発行することになりました。
 また、既存の種類についても読み直しや、調査し直しを行うこととしました。
 原稿作りに当たっては、季節ごとに行う「植物観察会(春、夏、秋、冬の4回)」、樹木との関係を考えるための「昆虫、シダ、キノコの各観察会」、それと会員が定期的に行う「フィールドワーク」などを通じて調査研究したことを反映させました。また、昨年度から2年コースで「利根別自然休養林観察ガイド要請講座」という講座を行っており、受講生の13名と共に森で観察実習をした折、受講生から出た質問や疑問なども、ガイドブック作りに大いに役立ちました。

 このガイドブックの特徴は、1種類を見開き2ページで紹介してあり、左ページには実際の樹木の葉のコピーを載せ、右ページには解説文として「名前・花期・分布」「特徴」「一口メモ」という構成にしてあることです。実物の葉のコピーは検索する上でとても役立つもので、観察会に参加された一般市民にも大変好評です。
 今回、前田一歩園財団の助成を受け、待望の「増補版」を発行できたことに大変感謝しております。また、観察会に参加していただいた市民の方々にもお礼を申し上げます。
 このガイドブックは今後実施する観察会で大いに利用してもらおうと思います。
 NPO法人利根別の森ネットワークURL http://www12.plala.or.jp/toneken/



ながぐつの土曜日

平岡どんぐりの森


「ながぐつの土曜日」活動開始



水生生物のパネル



森の生きものの冬支度を観察中



大人気のスノーシュー

【春】
 4月になって雪解けがすすんだ平岡公園で「ながぐつの土曜日」の活動が始まります。例年エゾアカガエルの産卵で幕開けする春には、たくさんの参加者が集まり、ミズバショウやエゾノリュウキンカの花を楽しみながら、湿地や池をのぞきこんでエゾアカガエルの卵を探します。卵塊をすくって素手でさわってみるのが、子供たちの春一番の楽しみ。 カエルは一度に何個ぐらい産卵するの?いつオタマジャクシになるの?親ガエルはどこにいるの?子供たちの質問に答えてくれるのは、ボランティアの学生さん達です。カエルの生態の話は、大人も興味深く聞きました。草むらには冬眠から目覚めたヘビや生まれたばかりのトカゲが隠れています。ちょっと顔をみせてよと、遠巻きにしてのぞきこむ子供たち。

【夏】
 オニヤンマやモイワサナエ、カワトンボなどたくさんのトンボが飛びかう夏。8月の「平岡公園にぎわいフェスタ」では、園内の小川や池で魚や水生昆虫を探しました。フクドジョウやスナヤツメ、トミヨ、トンボのヤゴもたくさんいました。前田一歩園の助成金で水生生物のパネルを作成しました。来夏はおおいに活用する予定です。

【秋】
 森の中にはあちこちでキノコが顔を出しています。コナラ、ミズナラやカエデ類の多い園内では、赤や黄色に色づいた紅葉がきれいです。落ち葉やどんぐりを集めてみました。木の実や草のタネも色や形がさまざまで面白い。そろそろ寒くなる季節、森の生きものの冬支度を観察します。

【冬】
 雪の季節はスノーシューが大人気。夏はササ藪や下草が茂って入れない森の奥まで探検です。スノーシューは初めてという子もすぐに慣れて、深い雪の中を元気に歩きました。葉が落ちて明るい森では、バードウォッチングや動物の足跡探し。1月の「冬のにぎわいフェスタ」では、スノーキャンドル作りやガマの葉の工作にも挑戦しました。



ミズナラ植樹とホタルの里づくり

つべつ自然の会


双葉のミズナラ(自然観察会)



2009年秋 植樹風景

 人口約6,000人の津別町は、総面積の86%を森林が占める豊かな木のまちです。
 命の源である森林は、生活に欠かせない資源となるばかりか、大きなやすらぎと教えを、無言のうちに私たちに与えてくれています。
 木とともに生きる私たちは、森林への感謝と、森林を守り育てる決意をこめて、昭和57年に日本で初めて「愛林のまち」を宣言しました。
 この翌年の昭和58年に、津別の自然を愛する有志により「つべつ自然の会」が結成されました。

 近年失われつつある子どもたちと(かつて子どもだった自分たち含めて)自然とのふれあいの場を復活させ、学習・体験の場を広く提供することを目的に現在54名の会員で活動を続けています。
 結成当初、2年の歳月をかけ会員各々の特技を生かして手づくりで建設した「森の家」を活動の拠点として、「普通のものが普通にある自然環境づくり」を目指して事業を行ってきました。
 本年、「前田一歩園財団自然環境保全活動」の助成をいただき、2回の植樹事業を「つべつ緑の少年団」の子どもたちと実施することができ、森林の役割としくみを共に学ぶことができました。

 また、7月25日に開催した「ホタル観察会」においては、あいにくの天候にもかかわらず、町内外から200名を超える方々にご来場いただき、町内21世紀の森の水辺に乱舞する姿をご堪能いただきました。
 今後も、会員のみならず多くの町民のみなさんとともに、自然豊かな「木のまち つべつ」の財産を守り育て、次代に引き継いでいけるよう活動を続けてまいります。