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自然普及事業
Natural Environment Conservation Activities

2007年度(平成19年度)自然環境保全活動助成事業報告


百年の森塾 森づくり教養・実践講座

百年の森ファンクラブ


森づくり



きのこ調査



雪中キャンプ

 百年の森塾は、森を破壊してきた20世紀に対し、21世紀は「森を再生する百年」という意識の普及・啓発、その実践となる森づくりと、その方法・成果を確認する調査とにより、地域の人々に森や自然の大切さ、必要性を理解してもらうことを目的としています。
 森づくりは人づくりという考えを基に、地域の森を地域の人々によってつくり上げていく活動と、その継続が次世代への大切な贈り物となることを確信し、その実現を願っております。


平成19年度 事業内容

○百年の森塾全11講座と森づくりの日の開催

●森づくりの為の実践講座 春~秋5回
(森林植生調査…2、きのこ調査…3)

●森・自然・地域を知る為の教養講座 冬5回

  1. 「後志・小樽と啄木」
     水口 忠氏     小樽啄木会会長
  2. 「百年の森に生息する植物の生活を理解する:カタクリ」
     石川 幸男氏   専修短大みどりの総合科学科教授
  3. 「羊蹄山麓のキノコ」
     五十嵐 恒夫氏  北大名誉教授
  4. 「百年の森にやって来る鳥たちの生態」
     村井 雅之氏   ゆうふつ原野自然情報センター
  5. 「どろ亀さんと森づくり」
     藤原 滉一郎氏  北大名誉教授

●地域の自然を知る為の体験講座 1回
(雪中キャンプ…1泊2日)

●森づくりの日秋3回

  1. ヤナギ、シラカバ、植栽木等の剪定・間引き
  2. 外来種の駆除 ニセアカシア
  3. 雪害防除の為の枝打ち

●森づくり実践講座で得られた資料作り



「ホタルの里づくり」を通して
自然環境の保全及び総合学習の支援活動

勇舞川を守る会

○平成7年から始めた「ホタルの里づくり」が、平成18年度から地元小学生の総合学習に採り入れられたことから、今年度の事業の重点を「総合学習」に据え、3年生82名を中心に「勇舞川不思議発見」の年間カリキュラムに沿って、地域住民と学校が連携して、自然環境保全活動を進めました。



○5月下旬……ヘイケボタルの幼虫を学校に持ち込み、飼育方法を学習した後、教室及び玄関ホールで飼育開始。

○6月14日……放流の前に、世界中で2,000種程のホタルの中で、幼虫時は水の中で、成虫になって光を出すのは5種類より確認されていないこと。北海道には水生のヘイケボタルと陸生のオバボタルが棲んでいること、ホタルは1年より生きられないことなどを学習した後、5月から児童の手で飼育してきた幼虫を「ホタルの里」へ放流しました。

○7月28日午後7時半から勇舞の森で「ホタルを観る会」が開催され、今年も大勢の子ども達や地域の方々が詰め掛けてくれました。
 手作りの提灯で飾り付けた四阿では、OHPによる画像を見ながらホタルの一生や生態、飼育の方法などを解説し、今年も自然羽化が確認されたことをお話しました。
 また、南極の氷床減少が加速していること、千歳川の秋鮭の遡上が激減していること、日常生活の中で誰でも出来る「ミニエコ作戦」を呼び掛けました。

○11月26日の総合学習で、昔はこの勇舞川にもカジカやザリガニ、夏にはホタルも飛び交っていたが、一時姿を消しました。その後、地域の皆さんが川の清掃や水草を移植し、児童の手でヤマメを放流し、ホタルの里にヘイケボタルの幼虫を放流などして昔の姿を取り戻したことを学習しました。
 また、水生昆虫調べで30種を確認し、ホタルの一生や生態についても学習しました。



ミジンコを材料とした環境教育教材作成と実践

道東ミジンコ研究会


写真1.ミジンコ
(Daphnia pulex; 和名:ミジンコ)
「ピアノ・オーボエ・ミジンコ三重奏」のポスター

 本会は「聞いたことはあるけれど実物を見たことがない」という人が圧倒的に多いミジンコの仲間の研究と環境教育教材作成・実践を目的として平成18年3月に発足しました(写真1:Daphnia pulex, 和名:ミジンコ)。今年度は前田一歩園財団の助成を受けて、阿寒湖に生息するミジンコを中心とした研究とワクワクするような教材の作成に取り組みました。
 ミジンコは動物プランクトンとして湖沼の生態系を考える上で欠かせない存在です。そしてまだまだ未知の部分が多い生き物でもあります。私たちは名前の通り(微塵子)小さいながらもたくさんの興味深い特徴を持つ「ミジンコの世界」の理解を通して、自然環境への関心を深めてもらいたいと考えています。

 作成した教材はミジンコの説明と写真からなるパネル群、パソコン・液晶プロジクター・スクリーンからなる解説機材、そして生きたミジンコを肉眼で観察するための透明容器・虫眼鏡と実体顕微鏡から構成されています(写真2)。
 ミジンコ(Daphnia pulex)は親で2 mm前後の体長ですので、肉眼でも泳いでいる様子は観察できます。まず虫眼鏡で観察してもらいます(写真3)。


写真2.教材の全体
(阿歴内小学校体育館)

写真3.虫眼鏡で観察する
(標津町サイエンス・フェア)

 次にスクリーンに図や写真を映し出してミジンコについての勉強をします(写真4)。ミジンコの体のつくり、生活、自然の中での役割などです。産卵や脱皮の様子を記録した映像も用意してあります。
 そしてその次に顕微鏡で生きたミジンコを観察します(写真5)。これで大人も子供も「ミジンコの世界」に引き込まれてしまいます。小さな体の中で心臓が拍動しているのがはっきり見えます。触角を動かして泳ぐ様子も見ることができます。


写真4.スクリーンを使って説明する
(標津町サイエンス・フェア)

写真5.実体顕微鏡で観察する
(標津町サイエンス・フェア)

 今年度の実施事業を以下に示します。

  1. 7月29日:「ピアノ・オーボエ・ミジンコ三重奏」演奏とミジンコ観察。子供を含む一般市民に生きたミジンコを観察してもらった。
  2. 10月27〜28日:北海道教育大学釧路校大学祭の企画として作成したミジンコ教材プログラムの実施
  3. 1月26日:1. 標津町小学生を対象とした「サイエンス・フェア」に参加した。
         2. 標茶町教育委員会主催「家庭教育学級」で教材プログラムを実施した。
  4. 2月9〜16日:阿寒湖畔エコミュージアムセンターで「ミジンコの生態と阿寒湖生息種の報告」と題してプレゼンテーションを実施した。
  5. 2月15日:阿歴内小中学校体育館において、PTA研修会として生徒・教師・父母の集う「サイエンス・フェア」に参加し、ミジンコ・プログラムを実施した。

 この教材は持ち運びが容易なように考えて作りましたので、生きたミジンコを連れて、いろいろな所に出前をしたいと思っています。 ご希望があればお知らせください。また、ミジンコを飼ってみたいという人には飼育マニュアルをつけてミジンコを提供することもできます。



セイタカアワダチソウ駆除作戦

雨竜沼湿原を愛する会

 雨竜沼湿原は山岳域の高層湿原では世界で初めてラムサール条約湿地に登録され、散策しながら自然観察など環境学習の場として、ファミリーユースで利活用され、楽しまれています。


セイタカ発見



法面防除



記念写真

 私たちは多くの生物と共存共栄しています。多くは有益な生物ですが、しかしながら人間活動により導入され、地域の自然生態系に大きな影響を与える外来生物がいます。雨竜側登山口のゲートパーク地区の駐車場、第一吊橋までの遊歩道区域には、施設整備や来訪者による非意図的導入などにより、特定外来生物に指定されたオオハンゴンソウやセイタカアワダチソウ、オオアワダチソウなど、11科35種の外来植物が侵入して在来植物の生育を脅かしていました。これらが登山道を駆け上り、湿原内に侵入すると手の施しようがなく、里地里山の自然植生と湿原生態系の保全のため平成10年から、これら外来植物の抜き取り防除を実施してきました。

 本年は8月18日に一般ボランティアを募集し、雨竜小学校みどり少年団、滝川市立江部乙中学校工芸部の生徒たちや一般参加者と当会の総勢43人により実施しました。最初は外来植物を区別できなかった生徒たちも教えてもらいながら駐車場の法面や遊歩道、切土法面に生育する外来植物を1本1本抜き取りました。地下茎で繋がっている植物は力を込めてゆっくりと引き抜かないと千切れてしまい、悪戦苦闘です。しかし、切土法面では身軽な子供たちの独壇場で、大人たちは下からサポートです。皆さんの活躍は2tトラック荷台に一杯の成果となりました。

 雨竜沼湿原がいつまでも雨竜沼湿原であり続けるために、みんなで守ろう雨竜沼湿原。ここに持ち込まれ咲いている外来植物に罪はないのですが、子供たちが遊び心を持って楽しみながら引っこ抜いて、在来の自然を保全することの大切さを実感してもらえたら、環境学習を実践する経験が未来へと繋がる1日でした。成果は上がってグッと減っていますが、外来植物がない自然公園を目指して今後とも継続します。



自然観察池づくり(平成19年度分)

    NPO法人 ビオトープ・イタンキin室蘭

 地球岬へと続く断崖絶壁の東の外れ、鳴り砂で有名なイタンキ浜に隣接する潮見公園に、失われてしまった室蘭の湿原を「ビオトープ・イタンキ」として復元したいと、私達は考えています。現地は砂浜へと続く海浜植物の豊かな群落、草原から沢水の有る急斜面そして背後の小山へと多くの地形的・生物的要素がコンパクトに集中しています。ここに沢水を利用して水路と湿地を配することにより、ふる里の多様な生き物を育むことができます。「獲物のあるビオトープ」作りを進め、子ども達が身近な自然に触れる機会を増やすことにより、その健全な成長に役立ちたいと考えているからです。




 子ども達が小さな生き物にかかわるということは、現実にはその生き物を死なせてしまうことがほとんどです。しかし、このことの積み重ねの中から命のはかなさと大切さが理解されてゆきます。現在のように、ボタン操作ひとつで全てがリセットされ、やり直しがきくバーチャルな体験に満ちている時代こそ、ナマの生き物、生き返ることのない生き物に接して育つことが必要です。

 水源の沢水はザリガニも住み水質は良いのですが、水量が少ないのと砂質の土地であるために防水工事が必要になります。平成18年15㎡、平成19年300㎡の防水シート埋設の工事を行いました。土木工事が終了し、砂泥の窪地に水を湛えただけの殺風景な広がりに、子ども達の手で室蘭在来のトミヨやエゾアカガエルのおたまじゃくしを放流したり、潮風最前線に植樹するなどした結果、短期間で大変順調に自然回復が進んでいます。

 北方系の希少種であるマダラヤンマをはじめ18種ものトンボの飛来も観察され、特に8月末にはショウジョウトンボが飛来しました。このトンボは西日本では普通種ですが、東北地方では産地が限られ稀少、北海道では1957年に函館での記録が1件有っただけ。産卵行動が観察されヤゴも採取されていますので、北限記録の更新と同時に温暖化進行への警鐘の1打ともなります。

 準備を進めてきたホタル復活の計画も順調に進み、放流幼虫の羽化も多数見られるなど自律的繁殖・定着も近いと期待しています。「獲物のあるビオトープ」は平成20年に400㎡、その後も工事を進め、数年かけて水路・湿地部分が2000㎡、周辺部を含めて5000㎡ほどとする全体計画です。
詳しくは「ビオトープ・イタンキ」のホームページもご覧下さい。



釧路湿原域におけるキタサンショウウオの生態研究
及びその環境教育への利用

 NPO法人 環境把握推進ネットワーク-PEGー


キタサンショウウオ



学習会に参加する子ども達



リーフレット『釧路湿原の両生類』

 釧路湿原を代表する生物であるキタサンショウウオは、現在環境省によって準絶滅危惧、北海道によって絶滅危惧種に定められています。また本種は釧路市、標茶町では文化財保護条例によって『天然記念物』に種指定されています。

 サンショウウオという名前はだれでも知っていますが、「実物を見たことがある」、「触ったことがある」という人はほとんどいないというのが現状です。
 そこで私たちの団体では、(財)前田一歩園財団の助成を受けて、キタサンショウウオの生態調査体験、講演会、小中学生などを対象とした自然体験学習会、リーフレットの作成を実施しました。

「キタサンショウウオ生態調査体験」
 キタサンショウウオの生態調査体験は、釧路湿原域のキタサンショウウオ生息地でトラップによる成体捕獲調査を実施し、4名の地元大学生が参加しました。参加者は初めて見るキタサンショウウオを熱心に観察していました。また、調査によって得られたデータは、今後のキタサンショウウオの保護・保全活動に役立てていきたいと思います。

「講演会、自然体験学習の実施」
 講演会は、北海道教育大学釧路校の学生(約30名)を対象に実施しました。講演は、「キタサンショウウオの生態及び保護状況について」というテーマで実施し、キタサンショウウオ保護の現状や今後の課題について知ってもらうことができました。
 自然体験学習会は計3回実施しました。学習会には、園児、小学生、中学生などの参加があり、自然観察やネイチャーゲームを通してキタサンショウウオ等の生物について学びました。参加者からは、「初めて知った」、「もっと知りたい」などの意見をもらうことができ、キタサンショウウオ保護への第一歩となる活動ができたと感じています。

「リーフレットの作成」
 釧路湿原に生息するキタサンショウウオ等の両生類について記した一般向けリーフレット『釧路湿原の両生類』を作成しました。今後、当法人の主催するイベントの参加者や道東の自然関連施設等での無料配布を実施していき、まずはキタサンショウウオ等の両生類について知っていただけるよう、普及活動に励んでいきたいと考えています。



森は海の恋人運動事業

新ひだか町緑化推進委員会

 新ひだか町は、旧三石町と旧静内町が平成18年3月31日に合併して出来た新しい町です。
 位置は、北海道の南東部、日高支庁管内の中央部に位置し、前面が太平洋、背後は丘陵地になっており、名産、学名「ミツイシコンブ」の生産地帯となっています。
 新ひだか町の森林面積は、総面積の83パーセントを占めており、北海道内でも有数の広さを誇っております。
 森林は、林業生産の場だけではなく、治山、治水、水源かん養などの多面的な機能を有しています。
 特に、森林と川と海は自然界の連鎖による恩恵を維持することが必要不可欠であり、海洋生物と森林環境の保全は、自然環境の循環現象として大いに密接な関係にあり海洋生物の生育環境を保全するため、当町の海岸に近い丘陵地に森林の多面的機能を発揮することを目的として、「森は海の恋人運動」と位置付けて植樹を実施し、地球環境を保全するものであります。


 この運動は、新ひだか町緑化推進委員会が主体となり、行政、産業団体、任意の林業関係団体、建設業などの町民ボランティア150人の協力を得て、予め、林業関係者に委託し地拵えした、町有地0.31haに平均樹高25㎝のクロマツの苗木、1,200本を平成19年5月24日に植樹しました。

 この事業は、現在、森林環境の保全を主体に地球温暖化対策を含めて、人間の生命の尊厳を永久に持続しなければならない使命が我々に課されております。
 行政が主体性を持ちながら、町民のボランティア活動により実施しており、運動を通して、森林環境保全と地球環境について考える良い機会として継続しようとするものです。
 参加者には、最高齢85歳以上の年輪クラブ所属の役員も参加されており、この運動に対する意識の高さが伺えるものと感じております。

 また、この運動は、「森は海の恋人運動」の名称のとおり、自然循環環境の摂理を林業関係者に止まらず、漁協女性部や水産加工業関係者も参加しており、植樹を通した森林環境に対する意識の高揚が図られたものと考えており、今後もこの運動を継続し、少しでも多くの町民が自分の住んでいる、この大地の環境保全に対する意識の啓発が図られるよう取り組んで参ります。
 この運動は、新聞報道などでも取り上げられ、新聞を媒体として町内を始め日高管内の多くの人々の目に留まったことは有意義な成果があったものと考えております。



くしろエコ・フェア2007

くしろエコ・フェア2007 実行委員会

実施の経緯
 釧路地域の自然と環境に関心のある団体等が6月の環境月間に様々な活動を集中的に実施することにより、釧路の人々に自然や環境について考えるきっかけを提供することを目指して「くしろエコ・フェア2007」を開催しました。
 「くしろエコ・フェア2007」の実施にあたっては、実行委員会を組織し、メイン行事の講演会及び上映会、環境パネル展などの実施について企画・立案し、それらの活動が円滑に行われるように関係団体等との連絡、調整を行いました。
 また、実行委員会が主催したメイン行事に多くの人に参加してもらうために地元新聞社やFM放送局とも連携しこれらの活動を積極的に広報しました。

実施状況(くしろエコ・フェア2007実行委員会が主催した主な活動)

1.講演会&鼎談の実施(参加者170名)
 1 特別講演「釧路沈没」
(講師:辻井達一 日本国際湿地保全連合会会長)
 2 鼎談「釧路湿原を守り次代に引き継ぐために」
(司会:大西英一 釧路短期大学教授、
田丸典彦 北海道教育大学釧路校、
根津文博 元川湯観光協会会長)

2.特別上映会(参加者410名)
 地球温暖化防止を訴える「不都合な真実」の特別上映会

1 くしろエコ・フェア2007を通じた参加者数
 くしろエコ・フェア2007実行委員会主催
・講演会&鼎談(於:釧路キャッスルホテル) 170名
・特別上映会(於:ワーナー・マイカル・シネマズ釧路) 410名
・環境パネル展(於;釧路市立図書館、生涯学習センターまなぼっと) 約70名
・製紙工場見学会(於:日本製紙、王子製紙)  13名
・学校版ISO発表会(於:釧路市博物館)  12名
・環境ポスター、標語展(於:釧路市博物館)応募数 50通

2 くしろエコ・フェア2007の効果、反響
 環境問題に関心を持っている人にとって特別上映会「不都合な真実」の実施は、非常にインパクトがあったようで、「自分の生活を見直すきっかけとなった」「地球温暖化に対して自分ができることは何かを考えた」等の感想が多く寄せられた。(映画の感想については、http://www.heco-spc.or.jp/message.htmlに掲載、釧路分はNO.598~842を参照)



弟子屈町立美留和小学校における郷土読本作成事業

    川湯自然研究会

 弟子屈町 美留和は摩周湖外輪山の裾野に位置しています。摩周湖といえば「神秘の湖」などに形容されるように美しい景観と水の透明度の高さで知られていますが、美留和はその豊富な湧水でさまざまな恩恵を受けています。なかでも美留和川はその湧水を利用してさけます増殖事業が営まれているところです。美留和川の水源地は(社)十勝釧路管内さけます増殖事業協会の管理地で一般には立ち入ることの出来ない場所ですが、今回、子供たちの川の自然学習の場として特別に許可を受け職員の方に湧水地を案内して頂きました。ふ化場から湧水地を目指して川を歩きましたが、川の周辺は樹高20m以上の木が茂り暗い森を歩いているようでした。湧水地では子供たちが水深1,5m位から涌き出ている水を観察しましたが、初めてみる湧水はなんだかよく分らず、砂が踊っているところが水が涌き出ているところと分ると大感激でした。その湧水はどのような特徴があるかを、水温、電気伝導度、溶存酸素、pH等を調べてみました。湧水の水温は8.4℃と「低い温度なんだなー」という感想が聞かれました。また、湧水の周辺環境を観察すると高い木に囲まれていて、この自然林が湧水を守っていることなどがわかりました。

子供たちからは
  「美留和の湧水は1分で6トンなの?すごいな~」  
  「わき水がわいているところは もちもちしていた」
  「きれいな水だからサケがすみやすい」
  「自然の森は太くて大きな木がありました」
などの感想が聞かれ、自分たちが住んでいるふるさとの再発見につながった印象を受けました。


美留和の湧水地

美留和川にて

 本の内容としては「美留和の昔」「子供たちの自然学習」「ふ化事業」「川の生態系」「大学の学外実習場」「鳥」「樹木」「農業」「自然ガイド」「縄文期の土器」等になりますが、今回の郷土学習の本製作では、小学校の先生、ふ化事業を行っている人、川の生態を知っている人、大学の准教授、役場、教育委員会、環境省川湯自然保護官事務所、自然ガイドを行っている人、川湯エコミュージアムセンターのスタッフなど様々な人が関わりながら、それぞれ生きた文章を書いて頂くことが出来ました。印刷製本にあたり(財)前田一歩園財団の自然環境保全活動助成金、㈱辻谷建設の辻谷社長より助成をしていただき400部を製作し、教育関係や地域の人へ配布することが出来ました。このように「郷土の本」をそこに住む人が作り上げることが出来たのは、地域への思いや、子供たちへの贈り物をしたいと考えた皆様の賜物といえます。子供たちと大人がいっしょに作り上げていき、関係者の協力があって味わいのあるものが出来ると実感したところです。
 本を製作するにあたりご協力頂いた皆様にあらためてお礼申し上げます。