自然の力に生かされる財団の森林は、多くの野生の命を養う場にもなっています。森林管理にあたっては、野生動物の生息環境に配慮して採餌木や営巣木を残すとともに、ミズナラやオニグルミなど実のなる木を残すように努めています。
しかしその一方で、昭和59 年頃から森林内でエゾシカの生息数が急激に増えはじめ、森の生態系を脅かすようになってきました。
エゾシカたちは厳しい冬を生き抜くために、風雪を遮る下枝の張った針葉樹の大木と餌となるササや広葉樹、湧水と凍らない水飲み場があり、安全な鳥獣保護区でもある財団の管理する森に越冬地を求めて集まってきます。
現在では、財団独自のエゾシカ被害対策により、エゾシカによる樹皮食害の拡大は抑制されていますが、依然として予断を許さない状況です。
森林の資源保護、景観保全のため財団では平成7 年から専門家の知恵を借りながら、さまざまな対策を行ってきました。現在実施している主な対策は、「樹幹のネット巻き」、「ビートパルプ給餌」、「囲いワナによる生体捕獲」の3 つです。
また、今後の森づくりに役立てるため、エゾシカの生態や餌付けの効果を専門機関に調査、研究を依頼し、科学的な記録をしています。
硬いプラスティックのネットを樹幹に巻くことにより、物理的にシカが立木の樹皮を食べることができないようにする対策です。現在は主に、子どもたちを中心とした環境学習の一環として実施しています。
冬期間の樹皮食害を防ぐために、ビートパルプ(ビートの搾り滓)の給餌を行っています。給餌は立木の食害防止に非常に有効な方法です。
シカによる食害の根本的な要因はシカの生息密度の高まりにあります。そのため財団では平成11 年から16 年は猟銃による有害駆除、平成16 年から現在に至るまで囲いワナによる生体捕獲を実施しています。
これまでの対策により樹皮食害の抑制には成功していますが、依然広葉樹を中心とした幼稚樹の食害は抑えることができません、次世代を担う稚樹がエゾシカに食べられ育たない深刻な状況が続いています。